新学会体制の発足
第9期会長挨拶
埼玉学園大学 羽鳥 健司
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5月8日に感染法上の5類に引き下げられ、ようやく終息に向かいつつあります。これは、本学会の多くの会員が携わる医療の現場での、文字通り命を賭した支援が実を結びつつあることを示しているといえます。皆様のご活躍に、心からの感謝と敬意を表します。
COVID-19は、私たちの生活を一変させました。その大きな一つは、ビデオ通話をはじめとした、オンラインツールの利用が爆発的に拡大したことです。当学会でも、第22回および23回学術集会・研修会でのオンライン配信をはじめとして、もはやなくてはならない存在となっております。その一方で、オンラインでのコミュニケーションは、その性質上、五感に関する情報の圧縮が避けられません。時にこれは、コミュニケーションのズレに重大な影響を及ぼします。親子の愛着形成や終末期の看取りなど、安定した関係性や他者との信頼感が重要な位置を占めるコミュニケーションの場合、五感の全てを使い、相手の言語的・非言語的情報をキャッチしなければならないからです。そして、ヒューマン・ケアのエッセンスは、このようなリアルでのコミュニケーションにこそあるはずです。今後は、オンラインとリアルのコミュニケーションを、問題や目的に合わせて上手く使い分ける必要性に迫られると考えます。
さて、以下では、第8期の3年間における編集、学術、研修、広報の各委員会の活動報告と、第9期の学会運営における課題および目指す方向性について皆様と共有いたしたく存じます。
1.編集委員会(安保委員長)、および査読にご協力いただきました先生方におかれましては、迅速な投稿論文の審査と掲載にご尽力いただきました。機関誌は、学会の顔であり、学会の特徴を色濃く反映します。第9期では、迅速さと正確さのアピール、知名度のアップを目指し、念願のオープンアクセス化を実現し、更なる投稿数増加を目指したいと存じます。
2.学術委員会(中込委員長)の活動は、この3年間で最もCOVID-19の影響を受けました。ただ、2020年に開催が予定されていた学術集会は中止だったものの、第22~23回学術集会は、山崎大会委員長(広島国際大学)、小泉大会委員長(近畿大学)、および関係者皆様のおかげで、オンライン形式で開催することができました。今後は、オンラインと対面の両面から、会員の皆様の研究成果やヒューマン・ケアに関わる講演等を多彩な方法で発信できればと思います。
3.研修委員会(長田委員長)では、学術集会に合わせて開催されております。研修委員会でもCOVID-19の影響は大きく、関係者の皆様には大変ご尽力いただきました。そんな中でも、第22回「フォーカシング―こころの声に耳を傾ける―」、第23回「対話の力:生きること、死ぬことをめぐるヒューマン・ケアの在り方」をオンライン形式で開催していただきました。今後も、ヒューマン・ケアの現場に携わる皆様のお役に立てる研修会のご提供を目指します。
4.広報委員会(羽鳥委員長)では、学会ホームページの充実化と、学術集会、研修会のホームページをアーカイブできるサーバー契約をしました。引き続き、会員の皆様への最新情報をご提供し、更に新たな会員獲得に向けた広報戦略が求められます。また、年に1回のニューズレターを発刊しておりますので、会員の先生方におかれましては、ご寄稿に是非ともご協力くださいませ。第9期では、編集委員会と協力して、機関誌のオープンアクセス化に取り組めればと思います。
第9期の体制は、当学会の栄枯の分岐点を担っていると考えます。これまで、当学会の創設時から中心となってご活躍されてきた偉大な先生方が、引退されたり第一線を退かれたりされ、徐々に新しい会員が第二世代として学会を受け継いできております。古今東西の歴史は、二代目の出来栄えによって組織が興亡することを証明しています。引き継いだヒューマン・ケアの神髄と伝統を重んじつつ、チャットGPTやメタバースなど近年急速に進んでいる時代や社会に合わせた進化を遂げて参りたいと存じます。会員の先生方におかれましては、これまでと変わらぬご指導を賜れましたら望外の喜びです。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。